タンパク質の吸着、細胞の接着を抑制する生体不活性特性を持つ表面をSAM膜で形成する為に一般的に使用されているチオール化合物です。接触角、BSAやフィブリノーゲンの吸着実験、血小板接着実験、生体不活性なメカニズムの解析が次の文献により詳細に報告されています。Hayashi et al. Mechanism underlying bioinertness of self-assembled monolayersof oligo(ethylene glycol)-terminated alkanethiols on gold: protein adsorption,platelet adhesion, and surface forces. Phys.Chem.Chem.Phys.,2012,14,10196-10206又、OEGチオールの濃度(カバレッジ)と血小板の接着との関係は次の文献で詳細に報告されています。Sekine Hayashi. Evaluation of factors to determine platelet compatibilityby using self-assembled monolayers with a chemical gradient. Langmuir 2015, 31, 7100-7105.細胞パターン形成におけるバイオイナートなバックグラウンド (Chen et al. Science 276, 1425, 1997)、SPR金基板の修飾(Mrksich Whitesides Ann. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 25, 55, 1996, Lahiri et al. Langmuir 15, 7186, 1999),プロテインマイクロアレー(Schaeferling et al. Electrophoresis 23, 3097, 2002)などのアプリケーションでも利用されております。EG3SAMの場合の吸着の度合いは0.2%ML (percent monolayer)であり、1:1EG/COOH混合SAM(カタログNo.TH011)の場合は(i)フィブリノゲン:EG3に対して1.6%ML、EG6に対して0.4%。(ii)リゾチーム:EG3に対して1.0%ML、EG6に対して1.0%MLであることが報告されていますOstuni et al. (Langmuir 17, 5605, 2001)。ProChimia社のEGnチオールで形成されたSAMはこの点にいて~0.1%MLの優れた実験結果が出ています。EGチオール化合物を使用する興味深いアプリケーションの1つとしてセルパターニング用基板の修飾があげられます。まずセル接着部を希望する形や寸法に合わせてマイクロパターニングし(マイクロコンタクトプリンティングもしくはASOMIC、Kandere-Grzybowskaet al. Nature Methods 2, 739, 2005)、細胞を固定しない表面を吸着防止のEGチオール化合物で修飾します。このようなセルパターニングにより細胞の固定化を正確に行い不均一性を最小限にする事によって、細胞機能を定量的に研究する事が可能になります。
Whitesidesと Ingberは論文(C.S. Chen et al. Science 276, 1425, 1997)の中で形状の改良でどのようにアポトーシスをコントロールできるかについて述べています。最近ではBorisyと Grzybowskiの研究グループが、生細胞の細胞骨格機能をどのように調節しコントロールできるかに関し報告しています。(Nature Methods 2, 739, 2005)。写真はB16F1細胞を三角形にし、微小管(緑)、アクチンストレスファイバー(青)、接着班(赤)を蛍光標識したものです。細胞研究においてEGチオールが有効に使えるかどうかは細胞毒性の低さが重要となります。ProChimia社は純度を上げる特殊な製法により、非常に細胞毒性の低いチオールを開発しております。細胞と細胞表面を取り囲むバイオレジスタントな部分のコントラストを最大にする為にEG6チオール化合物(カタログNo.TH001-m11.n6)をおすすめしております。 油状ペースト:n3~n6
アミノ末端を持つチオール化合物はタンパク質や核酸の固定に適しています(Hodenland et al. Proc. Nat. Acad. Sci. 99, 5048, 2002)、(Bamdad, Biophys. J. 75, 1997, 1998)。生体不活性特性を持つEGn チオール(カタログNo.TH 001)と混合しバックグラウンドを形成すると効果的です。表面に結合する分子の密度はバックグラウンドのEGnチオールに対するNH2末端チオールのモル比を調節する事によりコントロールする事ができます。
右図は混合単分子膜の相溶性を示すものです。EGnリンカーが無い場合、アミノ終端のチオールはバックグラウンドEGnチオールから相分離し不均一な表面となります。カルボン酸終端のものと活性化エステル(カタログNo.TH005)のものと両方ございます。
ビオチンを末端に持つチオール化合物。ビオチン/ストレプトアビジンの結合に有用です。(Wilson Nock, Angew. Chem. Int. Ed. 42, 494, 2003; Schaeferling et al. Electrophoresis 23, 3097, 2002)。生体不活性特を持つEGチオール(TH 001)と混合してSAMを形成すると効果的です。
純度: 95% (1H NMR)反応性基NHSにより様々な分子と結合させる事ができます。 -ガラクトシダーゼ (Ball, J.C. et al. Anal. Chem. 75, 6932, 2003)、コラーゲンV、西洋ワサビペルオキシダーゼ(Zaugg, F.G. et al. J. Mat. Sci Mat. Med. 10, 255, 1999)などの固定化に利用する事ができます。 SAMに抗体を固定化し、免疫センサーを開発する為に活性化NHSエステル終端のチオールを利用する事が可能です(J. Am. Chem. Soc., 120, 500, 1998) 。生体不活性特を持つEGチオール(TH 001)と混合してSAMを形成すると効果的です。
メトキシ基を末端に持つEGチオール化合物は生体不活性特性を持つSAM膜の形成に優れています。LiedbergとTengvallの研究グループは、メトキシ末端が水酸基末端のEGチオールより弱いタンパク質結合を生じさせると報告しています(J. Biomater. Sci. 12, 581-597, 2001)。金基板と銀基板ではSAM膜のパッキング密度が異なり、SAM膜の生体不活性特性に影響を与える事が血小板とヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の接着実験により検証されています。Sekine Hayashi. Surface force and vibrational spectroscopic analysesof interfacial water molecules in the vicinity of methoxy-tri(ethyleneglycol)-terminated monolayers: mechanisms underlying the effect of lateralpacking density on bioinertness. Journal of biomaterials science, polymer edition, 2017.EG3OMeチオールは抗体検出用光学センサーのマイクロパーターニングのバックグラウンド(Sensors and Actuators B70, 232-242, 2000)及びマイクロアレーベースのイムノアッセイ(Anal. Chem. 76, 7257-7262, 2004)として利用されました。又、EG6OMeは宿主細胞へのウイルス感染制御を目的とした基板のマイクロパターニングのバックグラウンド(Biotech. Bioeng. 81, 719-725, 2003)や、吸着防止メカニズムの基礎研究(J. Am. Chem. Soc. 115, 10714-21, 1993; J. Biomed. Mater. Res. 56, 406-416, 2001)として利用する事ができます。
ニトリロ三酢酸はNi(II)と錯形成しHis-Tagモチーフと選択的かつ強固に結合するキレート試薬です。基板へのHis-Tagタンパク質の固定に有用です。(例:人TATAボックス結合タンパク質、転写活性化因子Gal4、酵母菌RNAポリメラーゼIIホロ酵素、一本鎖T-細胞受容体(Sigal, G.B.; Bamdad, C.; Barberis, A.; Strominger, J.; Whitesides, G.M. Anal. Chem. 68, 490, 1996)純度: 95% (1H NMR)アジド化合物はアセチレンと反応して5員環を形成します。スクリプス研究所のK.B.Sharpless教授がこの性質を利用した研究を展開しており、この方法を「クリック・ケミストリー」と名付けています。EGチオールで混合SAMを形成し非特異的吸着を防ぐ事もできます(生体不活性特性バックグラウンド形成用推奨EGチオール、カタログNo.TH001)(Angew. Chem. Int. Ed. 41, 2596, 2002)。クリックケミストリーは化学選択的に、優れた収率で様々な生体高分子の固定に役立つことが近年証明されております (J. Am. Chem. Soc. 127, 8600, 2005)。又、サイト選択的な電気化学とも組み合わせる事ができます (J. Am. Chem. Soc. 128, 1794-1795,2006 and also Science, Editor’s Choice, 10 February, 2006)。後者の場合、アジド末端のSAMで修飾された金電極にバイアス電圧を印加すると付随する銅触媒のレドックス状態を変わり、クリックケミストリーを行います。様々な金電極で時間を変えて様々な分子の固定化が可能な為、電気化学センサーアレーの開発などに有用です。類似品がありますので製品カタログNo.FT013.11とシランカタログNo.SI 004-SI 006をご参照下さい。
HS-(CH2)11-(EG)n-OCH2-CONH2
構造のバリエーションn=3,6性状:油状液体純度: 95% (1H NMR)
アミド末端を持つFT013-m10、FT013m15の類似品です。
HS-(CH2)11-EG6-GRGD
性状:白色個体純度: 95% (1H NMR)
アルギニン-グリシン-アスパラギン酸塩(RDG)の末端を持ち、細胞表面のインテグリンレセプターに結合する事により、様々な種類の細胞をSAMに固定する事ができます。非特異的結合を防ぐ為に、EGチオール(TH001-m11.n1~TH001-m11.n6)をバックグラウンドとして使用する事をお奨めいたします(J. Am. Chem. Soc. 120, 6548-6555, 1998; Chem. Soc. Rev. 29 267-273, 2000; or Biomaterials, 22, 943-955, 2001)